
2025年5月23日
種子島産:ニホンイシガメの個体差と交雑種について考える
種子島産ニホンイシガメ、交雑種など※本記事は筆者個人の観察・経験に基づく見解です。
種子島産?ニホンイシガメの出自と特徴
「種子島産」前回の記事でご紹介したニホンイシガメですが、本当に種子島の個体かどうかは、現在のところ検証が難しいのが現実です。

<種子島産とされるイシガメ>
甲羅の縁に見られる模様や色合いが「種子島産の特徴」とされる説もありますが、これも確実な証拠にはなりません。似たような特徴を持つ個体は、他地域で育ったカメにも見られます。
生息地域によって甲羅の色や形に違いが出るのは当然のことであり、この個体から生まれた子ガメたちも、全体的に黒っぽい模様の濃い特徴を持っています。

<種子島産の雌から産まれた個体>
ただし、これらの違いが「地域による特徴」なのか「遺伝的なもの」なのかははっきりしません。現代のニホンイシガメはほとんどがCB(飼育下繁殖)個体であるため、環境による違いよりも親の遺伝的影響が大きいと考えられます。
CB個体は「親の特徴」によって変わる
CB個体では、育つ環境はほぼ同じです。そのため、甲羅や体色の違いは親の遺伝情報に左右されます。また、繁殖の際には、雌親に保存されていた精子がどの雄のものかによっても子の特徴が変わってきます。
複数の雄と交配する可能性があるため、組み合わせは無数です。こうした背景もあり、研究者がニホンイシガメを分類する際の基準も広く設定されているのかもしれません。
交雑種(ウンキュウ)の識別について思うこと
近年よく話題に上がるのが、「交雑種(ウンキュウ)」の問題です。これは、ニホンイシガメとクサガメの交雑個体とされますが、その識別には曖昧な点が多いように感じています。
私はこれまでウンキュウを飼育した経験はありませんが、F1(第一世代)のウンキュウでも、見た目だけで判別するのは難しいと感じます。
「首元の色が…」「甲羅の縁が…」「甲羅の形が長方形気味…」といったあいまいな特徴だけで交雑種と判断するのは慎重であるべきです。
F2、F3、F4など世代が進めば進むほど、見た目での判別はさらに困難になります。仮にそういった交雑個体が自然界に広まっているなら、もっと多くのF1ウンキュウが目に入るはずです。
カメたちの求愛行動の違いに注目
長年、ニホンイシガメ、クサガメ、アカミミガメ、スッポンを飼育してきましたが、それぞれの求愛行動は明らかに違います。
もし交雑が自然界で起こるとすれば、
- ごく限られた環境下
- 飼育下での偶発的な交配
- あるいは人工的な交雑
といった特殊な条件が必要です。ニホンイシガメとクサガメでは、生息環境や行動パターンも異なるため、自然下で交雑が頻繁に起きているとは考えにくいのです。
まとめ:見守るという選択肢
生活環境によって体色や甲羅の形に違いが出るのは確かです。しかし、それをもってすぐに「交雑種」と決めつけるのは早計だと私は思います。また、種子島産など生息地域によって個体の違いを検証することも難しいことだと判断できました。
私は、よほどクサガメの特徴が強く出ているF1個体でない限り、ニホンイシガメとして見ています。現時点では、はっきりとした証明も研究も十分でないため、慎重に、そして静かに見守るべきではないかと考えています。
※この記事はあくまで筆者の経験と観察に基づく仮説です。学術的な裏付けはありませんが、カメの飼育に携わってきた一人としての意見としてご理解いただければ幸いです。