
2025年5月24日
ニホンイシガメ減り続ける──流行が生み出す保全の可能性
ニホンイシガメ、アカミミガメについて本記事は筆者個人の経験と観察に基づく見解です。
アカミミガメが増えたのは「流行」だった
アカミミガメ(いわゆるミドリガメ)が爆発的に増えた背景には、「流行」があったと私は考えています。
50年ほど前、私が子どもの頃、夜店ではアカミミガメのベビーがよく売られており、模様も美しく、多くの子どもたちが喜んで飼育していました。
数年後、かつて可愛らしかったアカミミガメは、川で巨大化したワイルド個体として目の前に現れ、私はその姿に驚いた記憶があります。凶暴で、なんでも食べる食欲。さらに卵もたくさん産む。
あの頃から、今日のようなアカミミガメの増殖問題は、すでに予想できたのではないかと今になって思います。
ニホンイシガメも「流行れば」増えるかもしれない
ニホンイシガメの飼育を続け、30年以上前からブリーディングをしています。
当時、近所の子どもたちに飼育をすすめたり、育てた子ガメを河川に放流したりしてきましたが、残念ながら、ニホンイシガメが目に見えて増えた実感はありません。
しかし、先日、かつてカメを渡した子どもが大人になり、「つい最近まで飼っていました」と話してくれたのです。その言葉に感動しました。
アカミミガメが流行とともに広がったように、ニホンイシガメも人気が出れば、人々の手で守り、増やしていける可能性があると思うのです。
最近ではメダカもブームとなり、さまざまな品種が道の駅やショップで販売されています。
ニホンイシガメも、再び注目され、**「川のどこにでもいるカメ」**として復活する日がくれば…そう願ってやみません。
ニホンイシガメの繁殖でわかる奥深さ
ニホンイシガメを繁殖させていますが、その中で自然界ではまず見られない珍しい個体が生まれることもあります。

こちらは3歳の雌個体です。幼体の頃は目立たなかったのですが、成長とともに**右前足に白い色抜け(パイド)**が現れました。とても珍しい配色で、自然界では目立ってしまい、生存が難しかったかもしれません。
※ハイカラーイシガメも甲羅が綺麗で珍しい個体です
双子のイシガメも──自然の奇跡と厳しさ
繁殖の中で、双子のイシガメが生まれたこともありました。
ヨークサックを中央に挟んで、お腹同士が向かい合った2匹の子ガメです。
残念ながら育ちませんでしたが、このような現象も自然界ではまず見ることのできない貴重な瞬間です。


自然界での生存率は1%未満?
野生のニホンイシガメが生き残るには、多くの障害があります。
- 卵の段階で鳥やアライグマ、ヌートリア、タヌキ、キツネなどに捕食される
- 川の増水や水害で流されてしまう
- 孵化しても捕食や環境の厳しさで成長できない
これらを考えると、自然界で無事に育つ個体は全体の1%にも満たないのではないかと感じます。
まとめ:ニホンイシガメを「守り」「伝える」ために
ニホンイシガメは、日本固有の美しいカメです。
流行や人気という言葉は商業的に聞こえるかもしれませんが、それが保全や理解の入り口になるのなら、悪いことではないと私は思います。
アカミミガメのように「増えてしまった」例ではなく、人の手で「守って増やす」存在として、ニホンイシガメがこれからも語り継がれ、自然の中で再び当たり前に見られる日が来ることを願っています。
※この記事は筆者の経験と観察に基づく私見です。研究や学術的な裏付けはありませんが、カメを愛し続けてきた一人の飼育者としての声として、お読みいただければ幸いです。